うつの日内変動 朝がつらい・動けない、夕方に楽になる理由


うつの症状として『日内変動』があります。
うつの調子の悪さが1日の中で変動していくのです。

朝が最も調子が悪く、昼過ぎから少しずつ改善して、夕方くらいになるとだいぶ復調するのが典型的なパターンです。

わたしもこのパターンで、朝がダメで夕方くらいから調子がよくなってきます。
あなたも同じようなパターンがありませんか?

ここでは、『日内変動』の症状や注意する点などについて説明します。

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うつの具合が日内変動するのはうつによくある症状

気分の落ち込み、辛さ、無気力、動けない、思考力の低下などのうつの症状が1日中ずっと辛いのではなく、1日の中で辛い時と楽な時が変動していく「日内変動」がある人は多くいます。

その中でも、特に朝の目覚めのタイミングが一番調子悪くなるのが典型的と言われています。

起きるのがツラく、何とか支度をして会社に行けても、午前中は頭がぜんぜん働かず仕事にならない。
でも昼を過ぎた頃からはだんだん復活してきて、夕方にはいつもの調子に戻ってくる。

うつの初期段階だとこのような感じで、寝不足とか疲れが溜まっているせいだと見過ごされてしまいがちです。
しかし、これは一過性のことではなく、程度の差はあっても毎日同じように朝がツラい状態が続いてしまうのです。

そしてうつが重症化してくると、目が覚めても動けない、布団から起きることができない、何とか起きられても支度ができないまま家を出る時間を迎えてしう、と生活に支障が出てくるようになってきます。

しかしそれでも、夕方になる頃には「朝の辛さは何だったんだろう?」と思えるくらい楽になってくるのです。
そしてこれが「実はサボりたかっただけなのかもしれない」という誤った考えを生むことにもつながりかねないのです(この誤解については、下で詳しく説明します)。

この日内変動が生じる原因というのはまだ解明されていないのですが、うつになると生体リズムが正常に働かなくなってしまうことが影響していると言われています。
生体リズムが正常に働かないことで、夜きちんと眠れなくなったり、朝になっても心身が覚醒しなくなってしまうのです。

夕方から楽になっても夜に活動的になるのは避けた方がいい

まず、夕方になると気分が良くなってくる、調子が上がってくるというのは、うつの「日内変動」という病態のせいなんだと理解することが大切です。

うつという病気は『1日の中で状態が変動する病気』なのです。
ですから夕方になって状態が楽になってきたとしても、それは表面的に表れてないだけで、うつ自体が良くなっているわけではないのです。
そして、うつの症状の重さというのは、朝の最も調子が悪い時の状態で判断することが重要です。

ですからたとえ夜は普通に動けたとしても、朝は全く動けないのであれば、あなたのうつの症状は「まったく動けないくらい辛い」状態なのです。
この点をしっかり認識することはとても大切です。

また、特に朝の症状が重いと、

いつも朝は辛くてぜんぜん仕事にならないけど、夕方になれば動けるようになってくるから夜に挽回しよう

と考えたくなりますが、これは危険な考えです。
夕方になって動けるようになったからと夜に活動を活発にすることは、うつを悪化させてしまうリスクがとても高くなるのです。

まず、夜遅くまで仕事をしてしまうと単純に睡眠時間が削られてしまうだけでなく、交感神経が活発な状態が夜遅くまで続くので、生体リズムが更に崩れていきます。

夜は副交感神経が優勢になって心身を休ませなければいけないのに、交感神経が活発ということはずーっと活動的な状態を続けさせて心身に負荷をかけ続けることになります。

そして交感神経が活発なままだと、睡眠の質も悪くなります。
うつになると、ただでさえ睡眠の質が悪くなってしまうのに、さらに追い打ちをかけてしまうようなものです。

睡眠時間が短く質も悪ければ、脳も身体も疲れがとれず翌日に持ち越してしまいます。
脳の疲労はうつを悪化させるとても大きな要因です。

また、夜の限られた時間の中で仕事を片付けようとするプレッシャーは、脳にとって余計なストレスで、うつを悪化させる原因となります。

ビジネス書などで「締め切り効果」を勧めていますが、度を越した締め切りは脳にとってただのストレスでしかありません。
ましてや、うつという病気の脳にこのようなストレスは、うつを悪化させる害でしかありません。
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朝が不調で動けないのはうつのせいでサボり癖ではない

ここまで説明してきた通り、朝が最も調子が悪くなってしまうのはうつの日内変動という病態のせいです。
決して「会社をサボりたいから」とか「怠け」とか「甘え」で具合が悪くなったわけではありません。

しかし、『夕方になると元気になるのに、朝は具合が悪くなる』のは「サボりたいから」「怠けたいから」という「甘え」が理由だと誤解してしまい、「自分は怠け者でダメな奴だ」と自分を責めてしまうのです

ただでさえ、うつになると何かと自分を責める感情が生じやすくなりますし、また自責の感情は強い精神的ストレスなのでうつを悪化させる要因になります。

ですから、「朝、具合が悪くなるのはうつの症状のせい」ということをしっかり理解して、決して自分を責めてはいけません。

朝、調子が悪いのは心からのSOSかもしれない

朝、調子が悪くて動けない、会社に行けないというのは、日内変動だけが原因ではなく、心からのSOSであるという見方もあるようです。

つまり、「会社に行きたくない、行ったら危険」と心が感じていて自己防衛本能が働いているのです。
これは「サボりたい」という理由ではなく、会社にはあなたをうつに追い込んだ原因である強いストレスの根源があり、「そのストレスから逃避したい・避難したい、そうしないと自分が壊れてしまう!」と心が訴えているのです。

理性で「会社に行かなければならない」と強く考えている人ほど、その理性に反抗するように強く症状が出ると言われています。

この場合も、朝会社に行けないほど調子が悪くなるのは、ストレスによってうつになるほど脳や心身が蝕まれているのです。
決して「甘え」や「怠け」のせいではなく、「うつ」という病気のせいなのです。

さいごに

朝、うつの症状が強く出て辛い状態になるのは、日内変動のせいであることを理解して、自分を責めないようにしてください。

そして自分だけでなく、周りの人にもうつの日内変動のことを理解してもらいましょう。

周りの人から「夕方はあんなに元気なのに、朝だけ具合が悪いって仮病じゃないの?」と誤解されてしまうのは、自分を責めるのと同じくらい辛いことです。

また、このような日内変動をずっと感じていながらもまだ診察を受けていないのであれば、専門医の診察を受けることを強くお勧めします。

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