うつ病と睡眠には密接な関係があります。実際、うつ病の人の9割に睡眠の問題があると言われます。
また、逆に睡眠に問題があるとうつを発症しやすくなる、とも言われています。
ここでは、うつと睡眠の問題について説明します。
睡眠障害の症状とは?
睡眠に問題がある状態を睡眠障害といいますが、睡眠障害には以下の入眠障害、中途覚醒・早朝覚醒、過眠のパターンがあります。
入眠障害
入眠障害は、寝ようと布団に入ってもなかなか寝付けない状態が毎日のように続いてしまうものです。いわゆる「不眠症」と呼ばれているものです。
「眠ろう」と思っているのになぜか眠くならずなかなか眠れない、布団に入っても色々と考えてしまってむしろ目がさえてしまう、といった症状があります。また眠れたとしても、眠りが浅く熟睡感が得られないことが多いです。
中途覚醒・早朝覚醒
中途覚醒というのは、眠っても夜中に目が覚めてしまい、その後眠れなくなる、あるいはウトウトはできてもまたすぐに目が覚めるのを繰り返しながら朝を迎えてしまいます。眠りに入ってから3~4時間で目が覚めてしまうような感じです。ただし、目が覚めてもその後またすぐに眠れるのであれば、それほど悪影響はないと言われています。
また中途覚醒よりは長い時間眠れるものの、起きようとしている時間より早い早朝に目が覚めてしまう場合は、早朝覚醒と呼ばれます。
睡眠導入剤を飲めば眠りに入るのはそれほど問題なかったのですが、どうしても眠ってから3時間程度で目が覚めてしまうのです。しかも、必ず苦しかったり嫌な目にあったりする悪い夢を見てハッとして目が覚めるのです。
ですから目覚めはいつも気分が悪く、頭は何となく興奮している感じがして、その後はまともに眠れません。なんとなくウトウトはするのですが、1時間くらいでまた夢を見て目が覚める、というのを繰り返して起きる時間になってしまう、という状態がほぼ毎日のように続いていました。
また、この中途覚醒というのは、落ち込み感や気持ちの辛さといった他のうつの症状がひどい時はもちろんのこと、比較的調子が良いと感じている時期でも同じように起きてました。つまり私の感覚としては、気分の落ち込みや抑うつ気分の強さと中途覚醒の起きる頻度にはあまり関連が感じられなかったのです。
過眠
過眠はいくら眠ってもまだ眠い状態が日常的に続いてしまう状態です。うつ病の過眠は、一度寝たらずっと起きないで寝続けるだけでなく、起きた後も強い眠気を感じることが高頻度であります。
うつの睡眠障害は中途覚醒や入眠障害が多く眠りが浅い
うつによる睡眠障害として多いのは中途覚醒だと言われていますが、日本人は入眠障害の方が多いという調査結果もあります。いずれにしても不眠系の症状の方が過眠より圧倒的に多くなります。なかなか眠れない入眠障害がある上に、夜中に何度も目が覚める中途覚醒を併発することも多く見られます。
それだけでなく、たとえ途中ではっきり目覚めることなく眠れたとしても、深い眠りにつくことができず浅い眠りのまま朝を迎えてしまい回復感や熟睡感が全然得られないケースもあります。
一方で過眠の症状は、うつの人の10~20%に出ると言われていますが、過眠と不眠の両方の症状が現れる人も少なくないようです。また過眠と言っても眠っている時間が長いだけで、ぐっすり眠れているとは限りません。結局ずっと浅い眠りが続くだけで、睡眠時間の割に眠った実感が得られないことが多いのです。
この他うつの人の睡眠に対する訴えとして、私と同じように不快な夢を見るケースも多くあるようです。
睡眠障害とうつの関係
うつは脳の病気です。脳が健康な状態ではなく、正常に働かなくなってしまった状態です。
そして睡眠というのは、言うまでもなく心身を休めるために重要なことで生きるために絶対に不可欠なことです。もちろん脳にとっても例外ではありません。質の良い十分な睡眠が、日中のストレスに溢れた活動で疲れた脳を休ませるのに絶対に必要なのです。
とは言え、それがわかっていても、忙しかったりすると優先順位が低くなりおざなりになりがちです。仕事が忙しい時はもちろんのこと、テレビやスマホなどの理由で寝る時間が遅くなることは日常的にあるのではないでしょうか。
仕事で長時間労働が続くとうつを発症しやすいのは、仕事の過度なストレスと睡眠不足の両方で脳にダメージを与えてしまうからです。
一方でうつになってしまった脳は、正常に動けなくなった結果、本来動物の基本的な行動である睡眠でさえも正常にとれなくなってしまいます。
うつになると、
- 脳がいつも興奮状態になってしまう
- 体内時計が狂ってしまう
- 覚醒(朝目覚めて体を活動モードにする)や睡眠のための脳内物質の分泌量が著しく減少する
- 自律神経が正しく機能しないため眠るために必要な副交感神経への切り替えがうまくいかなくなる
と様々な睡眠を妨げることが発生してしまうのです。
つまり、睡眠不足のせいでうつは悪化する、うつのせいで眠れなくなる、という負のループに入り込んでしまうのです。どちらかが他方の原因というよりは、きっかけはどちらかかもしれないけれど両者が影響し合って悪循環を引き起こしてしまうのです。
また人によっては、体内時計や覚醒・睡眠のための脳内物質の分泌量が狂ったり、自律神経の切り替えがうまくいかないことが過眠という形で現れることになります。
さいごに
うつを改善するためには睡眠の状態を改善していくことも、重要なことの一つです。ただ、睡眠障害というのはなかなか改善が難しいものでもあります。うつと睡眠障害というのは悪くなっていくときは負のループで互いに影響し合いうのですが、逆にうつが改善してきても睡眠障害は思うように改善してこないことが多いのです。
実際、私もうつの調子が良くなっている時でも中途覚醒は変わらずありました。うつの状態が悪い時と比べればマシにはなりましたが、どうしても夜中に目が覚めるのは治まらなかったのです。うつが良くなってくれば睡眠障害も一緒に良くなってくるという単純なものではなかったのです。つまり、睡眠障害は睡眠障害で改善していかないといけないようだと気づきました。