うつになると憂鬱だったり落ち込んだりとネガティブな気分に支配されてしまいますが、それに加えて自分自身に対する評価もネガティブになってしまいます。
自分の存在価値を否定したり、自分の将来を悲観したりして自分のことを追い詰めてしまいます。
このような自分自身に対する否定的・悲観的な認知もうつ病の症状の一つです。
ここではうつの自分自身に対する否定的・悲観的な認知について詳しく説明していきます。
【目次】
うつになると自分に否定的な考えばかり湧いてくる
うつになると、「自分はダメな人間だ」「自分なんて居ないほうがいい」「自分は周りに迷惑ばかりかけている」といった自分に否定的な考えばかりが浮かんできてしまいます。
うつの感情の障害によって落ち込んでいたり憂鬱だったりとネガティブな気分に支配されている状態ですから、自分のことをポジティブに考える事はそもそも難しいのですが、しかし必要以上に自分のことを否定的に考えてしまうのです。
⇒【参考】うつは気分の落ち込み以外にも不安やイライラ、つらい感情も
加えて、思考の障害のために仕事や家事などが思うようにできなくなってしまうことが、『自分は何もできないダメな人間』と思い込むことに拍車をかけてしまいます。
⇒【参考】うつは思考力や記憶力や決断力の低下で能力が著しく低下する
これが進んでしまうと、自分の存在価値自体を否定するようになり、『自分なんて生きている価値がない』と思うようにまでなってしまいます。この自己否定感が、『自分は消えてなくなりたい』という考えになっていき『希死念慮』につながってしまうのです。
うつのせいで強く自分を責め、ひどくなると罪業妄想までも出てくる
自分に対する否定が進むのと同時に、自分を責める気持ちも強くなっていきます。
「自分がいるだけで周りに迷惑ばかりかけている」と考えてしまったり、例えば仕事でちょっとしたミスをした時も「大失敗をしてしまい、会社や同僚にとんでもない迷惑をかけてしまった」と必要上に強く罪悪感を感じてしまったりします。
このような自分を責めたり罪悪感を感じていることに対して、周りの人がいくら「そんなことはないよ、気にし過ぎだよ」と言っても、本人は聞き入れられません。それどころか、次から次へと罪悪感を感じて、自分を責め続けます。
また、今だけでなく過去のよくない出来事、特に後悔している事を思い出しても罪悪感を感じ、やはり必要以上に強く自分を責めてしまうのです。特にうつになると、過去のネガティブばかり思い出すようになるので、今の自分のことも過去の自分のことも責め続けてしまうのです。
こうしてうつが進んでしまうと、単なる罪悪感ではなく『罪業妄想』という妄想に進んでしまう可能性もあります。妄想というのは、「普通で考えればあり得ないことなのに、本人はそれが事実・真実だと信じている訂正できない思い込み」で、『罪業妄想』はそれまで感じていた自己否定感や罪悪感が更に強くなり、『自分には重い罪がある』と信じ込んでしまうのです。そして、『罪を犯した自分は罰を受けるのだ』ということまで考えてしまうのです。
本人が「罪」だと感じていることは、実際には上で説明したように実際には大したことがないケースがほとんどです。一言謝れば済んでしまうようなことなのに、「自分はとんでもないことをしでかしてしまったんだ」と思い込んでしまうのです。しかも本人が、それが真実だと思い込んでいるわけですから、周りの人が否定したとしても納得しません。
このように自分を責める続けることも、『希死念慮』につながってしまいます。「こんな罪深い自分が生きているのは申し訳ない、罰を受けるべき」と考えてしまったり、あるいは「自分を責め続ける苦痛から逃れたい」と考えてしまうのです。
うつになると自分の将来が悲観的としか考えられなくなる
うつは、今の自分や過去の自分に対して否定的であったり責めてしまったりするだけでなく、未来の自分に対しても悲観的な考えしかできません。
「ダメな自分」「罪深い自分」に明るい未来があると思えないのです。「このまま生き続けていても周りに迷惑をかけ続けるし、生きていることが罪」であると考え、また「このまま生き続けていても、ずっと辛いままで何もいいことなんて無い、何も好転しない、むしろ今より悪くなる」と自分の将来に悲観的になってしまうのです。このように将来に何の希望も持てないことも『希死念慮』につながってしまうのは想像していただけると思います。
この未来に対する悲観的な考えの根底も、やはり自分への強い否定感で「こんなダメな自分に明るい明るい未来なんてあるはずがない」と考えてしまうのです。
さいごに
ですから、専門医にきちんと診察を受け、しっかり治療していけば自己否定感もだんだん弱まっていき、不必要に自分を責めることも減り、未来への明るい材料を見つけられるようになっていけるのです。
今は辛くて先も見通せないですが、とにかく正しい治療を受けることが大切です。少し時間はかかるかもしれませんが、少しずつでも楽になることを信じて受診してください。