うつは気分の落ち込み以外にも不安やイライラ、つらい感情も

うつ病の代表的な症状として、「抑うつ状態」、「気分の落ち込み」、「憂鬱な状態が続く」というものが知られているのではないでしょうか。

これらはうつ病の『感情の障害』と言われるものです。

うつ病の感情の障害は、ここで挙げた感情以外にも様々なネガティブな感情があり、こういった感情に苦しめられます。

ここではうつ病の感情の障害について詳しく説明していきます。

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うつの感情障害により気分が晴れない、抑うつなど様々なネガティブな気分になる

うつ病の感情の障害と言うのは、冒頭で説明した感情のほかにも、

強い不安感、イライラ、孤独感や寂しさ、ただただ悲しい、ずっと落ち込んだままふさぎ込む、

など様々なものがあります。人によってどういう感情を強く感じるのかは違ってきますが、ネガティブでツラい感情に1日中支配されてしまうのです。

これは、うつになると脳が「不快」なことにしか反応できなくなるせいだと言われています。

脳がストレスという『不快』な情報を長い期間受け続けてしまうことで麻痺して正常な反応ができなくなってしまい、『不快』にだけに過剰反応をするようになってしまいます。そのため感情の起伏がなくなり、特に『快』である「楽しい」「嬉しい」といったポジティブな感情が出なくなっていきます。そしてだんだん気分は沈みがちになり、抑うつ状態になり、そのうち脳の中はネガティブな感情ばかりで溢れかえってしまうのです。

そして、ネガティブな感情というのは『不快』なストレスになりますから、脳の麻痺はよりひどくなってしまいます。つまり、うつ状態の脳は自分で自分を攻撃しているようなものなのです

うつ状態の脳の中に溢れてくるネガティブな感情は、以下のように本人の意識とは無関係に生まれてきてしまいます。

  • 過去のネガティブな記憶や悲観的な未来の想像
  • 強い自己否定感
  • 外部からの嫌な情報への反応

過去のネガティブな記憶や悲観的な未来の想像

うつの状態になると、過去の悲しかった事や失敗、あるいは後悔していることといった嫌な記憶が次々に思い出されます。それも具体的な出来事というよりは、その時の悲しみや罪悪感といった感情面が強く思い出されます。

脳というのは特に何か考えていない時でも緩やかに活動していて、過去の記憶の整理や漠然と未来の予測をしたりしています。これがうつの状態になると、過去のネガティブな記憶ばかりピックアップされるようになり、また未来の予測も悲観的なことばかり浮かんできます。

このため特に自分で意識していなくても、脳が勝手にネガティブな感情を呼び起こしてしまうのです

強い自己否定感

うつになると、「自分はダメな人間だ」とか「周りに迷惑をかけてばかりいる」という自己否定感が強くなります。

うつの別の症状「思考の障害」の影響で頭が働かなくなり、段取りができなくなったり記憶力が低下してしまいます。このせいで仕事や家事などあらゆることが以前のように上手く出来なくなり、「自分は何もできないダメな人間になってしまった」と考えてしまうようになります。これに「感情の障害」自体で落ち込んでいることが加わり強い自己否定を感じるようになります。

【参考】うつは思考力や記憶力や決断力の低下で能力が著しく低下する

この自己否定感は、いわゆる自己啓発的に自分を否定するのとは違い、自分の存在価値そのものを根幹から揺るがしかねない感情です。

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外部からの嫌な情報への反応

うつの人というのは外部からネガティブな情報を受け取ると、自分とは関係ないことでも自分のことのように感じてしまうようになります。

例えば、職場で同僚が上司に怒られているのが聞こえてくると、自分は関係ないのに自分が怒られているような気持ちになってしまいます。あるいは痛ましい事故のニュースを見ると、まるで自分が当事者のような悲しみに襲われてしまいます。

普通であればこういう時、同僚に対して「彼も大変だな…」とか、事故の被害者に対して「かわいそうに…」というように自分と他者を切り離して考えることができます。しかしうつになると、自分と他者を切り離すことができず、自分のこととして感じてしまうのです。

うつで「とにかくただただツラい」状態になってしまうこともある

うつの「感情の障害」で感じるネガティブな感情は、ひどくなると『ただただツラい』としか感じられなくなっていきます。「落ち込む」とか「不安」とか名前のつく感情ではなく、本当に『ただただツラい』という感情に押しつぶされそうになるのです。

私がうつの調子が最悪な時、この『ただただツラい』感情が1番しんどいです。気力が無い以前にこれがツラくて横になったまま動けなくなります。

このツラさを言葉で表すのはとても難しいのですが、私の場合を敢えて例えると、まるで高熱が出ているかなような体のだるさや息苦しさのような感じです。

人によって感覚や感じ方は違いますから、別の方だと違った感じ方があるかもしれません。ただとにかくツラくて苦しいのは間違いないと思います。

ネガティブな気分が2週間以上続くなら医師の診断を受けた方がいい

例えば失恋をしたり、家族が亡くなったり、仕事で大失敗をしたりといった出来事が起きた場合にも、人間は落ち込んだり悲しんだりするものです。

ですからネガティブな感情があるからといって即うつ病というわけではありません。ですがこのような出来事によって感じた「悲しい」などの感情などは、徐々に弱まっていき元気を取り戻していくものです。

しかしうつ病の場合、上で説明した通り、うつ状態の脳はネガティブな感情を自ら生み出しているようなものなので、いつまで経ってもネガティブな感情は弱くならず、むしろ強まっていきます。

もし2週間以上もネガティブな気分が続いているようであれば、一度専門医の診察を受けるべきです。うつ病かどうかは、感情の障害だけでなくその他の症状も含めて総合的に診断されるものです。ですので正確な診断を受けるためにも、精神科やメンタルクリニック、あるいは心療内科などの専門医で診察を受けてください。

ちなみに2週間というのはあくまで目安です。家族の死などの強い悲しみは2週間そこらで癒えるものではありません。しかし、一方で家族との死別といった強い喪失感がきっかけでうつになってしまうケースもあります。いつまでも落ち込んだ気分のままで、何もする気が起きない状態が続くようであれば、一度診察を受けてみることを勧めます。

さいごに

気分の障害はうつ病の大きな症状の中の一つで、うつ病のよく知られている症状でもあります。

しかし一方で、「気の持ちよう」とか「気合が足らない」で片付けられがちな症状でもあるのです。

うつは脳の病気であり、気の持ちようや気合で何とかなるものではありません。いつまでもネガティブな感情が続くようであれば、ためらわずに専門医の診察を受けて下さい。

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